民泊新法では、民泊ホストは「
住宅宿泊事業者」として位置付けられます。
住宅宿泊事業者は民泊の業務を行う事業者として、宿泊者の安全・衛生の確保や都道府県知事への報告など、様々な業務が定められています。その役割と内容について確認していきましょう。
住宅宿泊事業者とは?
民泊新法では、民泊事業に関わる事業者について3種類の対象に分類しています。
その対象とは「
住宅宿泊事業者」「
住宅宿泊管理業者」「
住宅宿泊仲介業者」であり、この中の「
住宅宿泊事業者」が届出住宅を利用して民泊事業を行う民泊ホストにあたります。
住宅宿泊管理業者や住宅宿泊仲介業者についてはこちらの記事
「民泊新法における「住宅宿泊管理業者」とは」」で説明していますので、併せてご確認ください。
住宅宿泊事業者として住宅宿泊事業の運営をするためには、都道府県知事等にその旨の届出をする必要があります。また、届出の際には、届出住宅の要件を満たしていることを証明する書類や住宅の図面などを添付書類として提出しなければなりません。
民泊新法の届出についてはこちらの記事
「民泊新法の届出、どうしたらいいの?住宅宿泊事業法の届出の基本」で説明していますので、併せてご確認ください。
どんな業務があるの?住宅宿泊事業者の業務内容について
それでは、住宅宿泊事業者には一体どのような業務が定められているのでしょうか。
その役割と業務の全体を確認していきましょう。
住宅宿泊事業者の主な役割は、
住宅宿泊事業を適切に行うことです。
そして、住宅宿泊事業が適切に行われるための措置として以下10項目の業務が定められます。
(1) 宿泊者の衛生の確保
・・・居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上を確保し、定期的な清掃および換気を行うこと
(2) 宿泊者の安全の確保
・・・火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を測るために、非常用照明器具の設置や避難経路を表示する等の必要な措置を講じること
(3) 外国人観光旅客である宿泊者の快適性および利便性の確保
・・・宿泊者が外国人観光旅客であることも想定し、「届出住宅の設備の使用方法」「移動のための交通手段に関する情報」「火災や地震などの災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内」を、外国語で案内表示をすること
(4) 宿泊者名の備付け等
・・・宿泊者名簿(宿泊者の氏名、住所、職業および宿泊日を記載)を本人確認を行った上で作成し、作成日から三年間保管する。宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人である場合、その国籍および旅券番号を記載する。また、都道府県知事から要求があった場合には提出すること
(5) 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
・・・宿泊者に対して、騒音の防止やごみ処理、火災の防止のために配慮すべき事項について説明し、周辺地域の生活環境への悪影響を防止すること
(6) 苦情などへの対応
・・・届出住宅の周辺地域の住民から苦情などが発生した場合、適切かつ迅速に対応すること
(7) 住宅宿泊仲介業者への委託
・・・宿泊者に対する届出住宅における宿泊サービスの提供に係る契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者または旅行業者に委託すること
(8) 標識の掲示
・・・届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げること
(9) 都道府県知事への定期報告
・・・届出住宅ごとに、毎年2月,4月,6月,8月,10月,12月の15日までに、それぞれの月の前2月の内容について都道府県知事等に報告すること。
報告する内容は、[1]届出住宅に人を宿泊させた日数、[2]宿泊者数、[3]延べ宿泊者数、[4]国籍別の宿泊者数の内訳です。
(10) 住宅宿泊管理業者への委託
・・・以下のいずれかにあたる場合は、住宅宿泊事業者は住宅宿泊管理業者に管理業務を委託すること
・届出住宅の居室の数が「5」を超える場合
・届出住宅に人を宿泊される間に不在になる場合
これらが住宅宿泊事業者の業務として定められている内容になりますが、(10)住宅宿泊管理業者の委託については委託が必要のないケースもあります。住宅宿泊管理管理業者の委託については、こちらの記事
「民泊新法における「住宅宿泊管理業者」とは」で説明していますので併せてご確認ください。
そして住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する場合には、(1)~(6)の業務に関しては住宅宿泊管理業者の責任の下で担います。(8)~(10)に関しては、管理業務の委託の有無にかかわらず、住宅宿泊事業者自らの責任で実施すべき項目です。
つまり、管理業務の委託の有無によって業務内容が以下のように分けられます。
・
管理業務を委託する場合→(1)~(6)は住宅宿泊管理業者の責任の下で担い、(7)~(9)は住宅宿泊事業者自身で行う
・
管理業務を委託しない場合→(1)~(9)全て、住宅宿泊事業者自身で行う
管理業務を委託する場合には、一部の業務を住宅宿泊管理業者の責任の下で担うことになりますが、住宅宿泊事業者が全く関わらなくていいというわけではありません。委託の有無にかかわらず、住宅宿泊事業者の役割や業務は全て把握しておきましょう。
住宅宿泊事業者として、責任を持って役割を果たしましょう。
住宅宿泊事業者の役割と業務の全体についてご理解いただけたでしょうか。
届出住宅の部屋の管理だけをすればいいのではなく、都道府県への報告や宿泊者の名簿の作成や管理などの事務的な業務をあります。住宅宿泊事業者として行うべき業務をチェックリストなどにまとめておく等の対策をすると管理しやすくなるかもしれません。
住宅宿泊事業者の業務のそれぞれの内容詳細については、次回以降の記事で詳しく解説していきます。
まずは、住宅宿泊事業者としてどんな役割を果たすべきなのか、全体像を把握しておきましょう。